コラム(1)~なぜ、人を助けるのか?

鋸南復興アクセラレーションの清水多佳子です。先日、鋸南町のボランティアグループ「ロータリークラブ有志ボランティアグループ」(以下、RCV)の活動に参加いたしました。これから記述するのは、実際にボランティア活動に参加した際の私の感想です。これから、鋸南町のボランティア活動に参加したいという人に、参考にしていただきたいと思います。

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まず、あらかじめお伝えしたいのは、ボランティアグループ「RCV」が活動している現場は、特殊な案件であるということ。障害を持っている方、もしくは独居の高齢者で支援が必要な方を優先し、対応している。だからこそ、今、鋸南町に来ているボランティアさんは、介護や看護、福祉の資格を持つ、プロフェッショナルな人が多い。

 今回、私が入ったのは、精神に障害をお持ちで、自分が被災し、カビだらけの家に住んでいるという自覚さえもない高齢男性の家だった。まともなコミュニケーションがとれず、社会から断絶されている。その家に入って、台風被害後、雨漏りしている家屋のカビ除去をした。

ぞうきんで天井の青カビをふき、抗菌スプレーをかける。青カビは、何度もこすってもなかなか落ちない。ゴーグルは必須だ。間違ってゴーグルを外すと、カビの胞子が目に入り、目が痛む。

ゴーグルをかけなおして、再度、カビを拭きとる。いつの間にか夢中になっていた。一方で、ずっと考えていた。「なぜ、一人の男性を救うために、たくさんのボランティアさんが動くのだろう? 休みの日、ショッピングや旅行をしたほうが楽しいのではないか? そう思ってしまう自分は間違っているのだろうか?」 

今、鋸南町にいるボランティアさんは東京や神奈川から来ている人もいる。休みの日を利用し、はるばるやってくるのだ。困っている人を助けるために――。ただ、それだけのために。

ボランティアには、体力も必要だ。押し入れの中のカビ取りをするには、荷物をすべて外に出す。そのうち、不必要なものはゴミとして捨てなければならない。必要かどうかを判断するのは、この家に住む高齢男性その人である。   一つひとつ、本人に確認を取りながら、ゴミを分別していく。簡単ではあるが、手間のかかる作業だ。精神に障害があるためだろう。適切な判断ができない。それでも、本人の許可がないと、ゴミとして捨てることはできない。ボランティア活動が終わる時間は、夕方の4時。そのとき、すでに体力は限界に達し、クタクタになっていた。

 今回、ボランティアをして、楽しいと感じることはなかった。むしろショックだった。それと同時に、胸に熱いものがこみ上げてきた。困っている人がいれば、そこに助ける人が現れるということ。困っている人がいるから、助ける。簡単なようで、言うほど簡単ではない。損得の感情が生まれてしまったとたん、簡単に行動にうつすことができなくなる。たった一日の活動で、さまざまなことを考えた。

なぜ、人を助けるのか? 現場にその答えなどない。自分なりの答えを出していい。このボランティア活動に参加するだけで、きっと自らの人生を振り返ることもできるだろう。ぜひ、多くの人に鋸南町のボランティア現場に入り、たくさんのことを考えてほしい。

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